「なんだそりゃあ?」
「……あら、お帰り」
口を窄めて例のお菓子をちょび食いしていると、いつの間に部屋に入って来たのか、ホルマジオがわたしの咥えているモノを指差し、怪訝そうな顔をした。
「ナニって……ジャポネの大手メーカーのお菓子よ。イタリアにも名前は違うけど売ってるのね。懐かしくて買っちゃったわ」
今まで日本に居たときは、大して意識したことはなかった。学生のときだって、通りかかった友人がくれたことはあったけれど、自分で買ったことはない。
「ワイン飲む? これはチョコレートコーティングだけど、プレッツェルみたいな物もあるわよ。確かチーズもあったはず。それならスナックに……」
そう言って食べかけのそれを咥えたまま立ち上がり、キッチンに行こうとする。しかし、彼によって腰に手を回されたかと思うと、そのままストンと掛けていたソファーに横座りで向き合う形になった。
「お前が食ってるヤツから貰おうか……」
なんと、そう言ってホルマジオは、わたしの咥えたそれにそっと唇を当てる。ポキポキという音を立てて、ホルマジオの顔がどんどん近づいてくる。思わず顔が熱くなるのが自分でも分かった。ホルマジオとはもう何回キスしただろうか、数えられない。今だってこうやって一緒に住んでるし、当然ベッドだって共にする。なのにどうして、どうして……。
「……どうする?」
あとちょっとというところで、ホルマジオは咥えたままそう尋ねる。喋るのに合わせて動いているはずの唇も、辛うじて触れない。
「ずるい……」
そうわたしが答えると、ホルマジオはわたしの後頭部に手をやり、そのまま菓子もわたしの唇も食べてしまった。
「……ねぇ、どうしてコレを知ってるの?」
ようやく彼の長いキスから解放されて、わたしは彼を訝しげに見た。
「あ? 何の話だ?」
きっと彼のことだから、見慣れない菓子を買ってはしゃぐわたしを見て、こっそり調べていたんだろう。ジャポネの今日の日のことを。
FINE.